
「ラーメンと海外ビジネス」
林家木久蔵

海外ビジネスは世界情勢の影響を受けますよね。田中角栄さんにまで骨折ってもらった北京の店が、天安門事件であっさり幕でしたもの。
高校は食品科をでてるから、ラーメンとは無縁じゃない。友人はフード関係に大勢いますよ。
高校卒業と同時に森永乳業に就職したんですが一週間で退社。絵を描くのが好きだったんで、上司の紹介で漫画家さんに弟子入りしたわけですが、漫画を描きながら主人公になりきつて、でより声帯模写ばりに口の方が動いてしまう。こりゃ噺家にでもなったほうがいい、というんで先生が師匠に紹介状を書いてくれて…、今の職業はたから周りが決めてくれたようなものです。そういうわけで、昔の仲間は食品関係にたくさんいますよ。
仕事で地方に行ってお弁当ばかりじゃ味気ない。で、ラーメン。どこにでもありますから。
ラーメンが最初から好きだったわけじゃないんですよ。仕事で地方へ行っても我々はいつも弁当。どこでも同じ。飽きちゃうわけですよ。で、どこでもましなものといったらラーメンぐらいだから、どこそこのラーメンは旨いらしいという情報を交換するようになったわけ。それが新聞になり、イラストなんか描いているうちに一冊の本になってしまった次第。その余った2ペ一ジに、ラーメン党員募集!とやったわけです。それがラーメン党党首への第一歩で…。
海外には興味があって、どうせなら人のやらないことってんで中国にラーメン屋。中国なら田中角栄さん、ときて目白の自宅に…。
海外ビジネスというのは常に国際政治や経済とともに動いている、というのが実感ですね。北京に出した初の海外ラーメン店なんかはいい例です。元首相の田中角栄さんの目白のお宅まで訪ねて、噸家が会いに来たというのでご機嫌を損ねた角栄さんに「ラーメン党党員は現在2,000名以上でして」の一言でニッコリさせて…。ようやく。出店にこぎ着けたというのに、天安門事件ですべての努力がパーですよ。もっとも一杯13円のラーメンは店をそのまま続けてれば大赤字。いい潮時だったかもしれないですけどね。
バルセロナヘの出店は大成功。マジョルカ島の友人の助けがやっぱり大きいかな…?オリンピックの時なんかとくに大繁盛でしたね。
成功したスペインのバルセロナ店は、マジョルカ島にいる友人の助けを借りて出店した所です。バルセロナ五輪の時は大勢の観光客で賑わい、店も大繁盛でしたよ。もっともここでも、いいことばかりでなくて観光客の女性のために雇ったハンサムなスペイン青年が湾岸戦争の兵隊にとられるという、世界情勢というやつは、とんだところに災難をふりかけてくれるものだと思いましたね…。スペインの旅を楽しむにはあくせくしないこと。忙しくても昼食の後のシエスタ(昼寝)は欠かさない、スペインの生活習慣見習ってのんびり過ごすのがいいですよ。もちろんシエスタの前には旨いラーメンを味わって。


前ページ 目次へ 次ページ
|

|